「佐々木さんは―」
「はい」
直春は、笑顔で千草に話しかけた。
「お箸の持ち方がお上手ですね」
「ほんとやわ、育ちがいいんやねえ」
渡辺親子はそういって微笑んだ。千草は、その言葉の裏の意図を探ろうと模索していた。
「ありがとうございます、渡辺さんは――お魚を食べるのが上手ですね」
「かあ・・・母親に昔からこういうことはよく教わってきたので」
何か言おうとして、直春は取り繕うように笑顔を浮かべた。直春の言う通り、直春も写真でみた写真から感じられるような女装趣味を全く感じさせず、普通の成人男性らしく穏やかに食事を楽しんでいた。魚を食べるのが上手かったり、ナイフとフォークを使うのにも慣れている様子だ。
「育ちがいいのね、お似合いだわ」
康子はそういって思わず声に出しちゃったって顔で、「あらごめんなさい」と微笑んだ。
「私も同じこといおうとしたの」
裕子もそういって着物で口元を隠しながらおほほと笑った。今の会話でお似合いだなんてどういうことだろう。
「ちょっと、佐々木さんにも好きなタイプというか決める権利があるんだから」
直春は困ったようにそういうと、
「渡辺さんは私でいいんですか?」
千草は、はっきりとそう言った。その言葉には、ナイフを持って直春に突き付けているような気迫があった。
「いいですよ」
直春は、千草が突き付けたナイフを握って微笑んだ。
「こんな素敵な人であったことがありません、正直、一目惚れです」
直春が男らしくそういったのに対し、千草は心の中で睨みつけた。
私のことよく知らないくせに、素敵な人ですって?どんな裏が?どんな意図が。一目惚れなんてあるわけないでしょう?そういうのは恋愛小説とか恋愛ドラマとかだけの話よ。
「千草はどう?」
康子は、せかすように千草にそういった。
「私は・・・もう少し直春さんのことを知らないとわからないわ」
困ったようにそういうと、裕子が、
「そうやよねえ、母親同士で盛り上がっちゃって、私たちは別の席に移動するから2人で楽しんでちょうだい」
助け船ともわからない、おせっかい船を出した。
「それがええわ、ごめんねえ、きいつかえんくて」
「か、母さん」
千草が呼び止めようとすると、康子はにっこり微笑んだ。
「大丈夫、千草頑張るんやで」
小声で千草にエールを送り、おほほと2人は立ち上がると、襖をあけていってしまった。思わずため息をつきたくなった千草だったが、
「佐々木さんは、僕のことを知りたいとおっしゃっていましたが、どんなことが知りたいですか?」
突然質問されて戸惑った。どうして殺し屋に狙われているのかということは今まで話して少しだけ興味があるがそれ以外お前自身には興味ないと真実を伝えるわけにはいかない。
「そうですねえ、趣味はなんですか?」
「読書と、ゴルフです」
即答だった。正直納得の趣味だ。
「佐々木さんはどうですか?」
「私は、カフェめぐりと、料理です」
嘘だ、だが銃の手入れと人殺しの仕方を模索することが趣味ではこの美味しそうな飛騨牛も真っ青になってしまうだろう。
「女性らしい趣味ですね」
「ええ、渡辺さんも男性らしい趣味ですね」
なんだこの生産性のかけらもない無駄な会話は。お見合いというのはこんな感じなのか。千草は、無表情に肉を食べながらそう思った。
「佐々木さんの得意料理はなんですか?」
直春にそういわれて、千草はすぐに、
「から揚げです」
そう答えた。これらの趣味や得意料理はネットで一般男性に好感を持たれるものをチョイスしている。
「そうなんですね、佐々木さんのから揚げ、食べてみたいですね」
本当に思っているのかどうか怪しい誉め言葉を、千草は無表情で聞いていた。
「渡辺さんは、どんなジャンルの本が好きなんですか?」
「僕は推理小説ですね」
「知的なんですね」
「ありがとうございます、佐々木さんはお母様ととても仲がよいみたいですね」
渡辺は、探るような瞳で千草のことを見た。なにこの男。だからなんだっていうの?その質問にどんな裏があるの。千草はそればかり考えていた。
「2人ともよく似ていて素敵な親子だなと思います。僕も父を失ってから、母とずっと2人で・・・」
「そうなんですね、渡辺さんは地元なのにどうしてお母様の家に顔を出さないのですか?」
千草の問いに、渡辺は苦笑いで答えた。
「佐々木さんと一緒ですよ。退職されたと聞いた時は驚きました。本当にお母さん思いなんですね。僕の母、入院中癌と聞かされてショックを受けたと思うんですけど、佐々木さんのお母様が声をかけてくださったみたいで、頑張れたみたいなんです。佐々木さんのお母様は、佐々木さんの話をよくしていたらしくて、凄くいい娘さんだと。実をいうとそういう話を母から聞いて、僕はあなたに惹かれました。お互い大切な家族が大変な・・・時ですが大事な家族を支えていきましょう」
「家族思いなんですね」
「はい」
直春はしっかりと頷いた。それを見て千草は違和感を感じた。
「どう?話は弾んでる?」
康子たちは、よっちらえっちらと襖をあけ帰ってきた。
「千草さんとお話しができてよかったよ」
直春はそういっては直春の母に微笑んだ。
「どうだった?千草」
康子にそう聞かれて、千草は答えた。
「渡辺直春さん、気に入ったわ」
「本当!?よかったわぁ」
裕子は声をあげて喜んだ。そして、それは康子も同様だ。
「お互いね、独身の娘息子がいて、年も近いからもしかしてこれって運命なのかなって思ってたのよ」
康子は嬉しそうにそういった。
「そうそう、じゃ、これからお友達からってことでいいのかしら」
裕子は、話をまとめるようにそういった。
「よろしくお願いします、佐々木さん」
「えぇ、よろしくお願いします。渡辺さん」
今日はとりあえず大円談でまとまったと両方の母は喜んでいた。
「はい」
直春は、笑顔で千草に話しかけた。
「お箸の持ち方がお上手ですね」
「ほんとやわ、育ちがいいんやねえ」
渡辺親子はそういって微笑んだ。千草は、その言葉の裏の意図を探ろうと模索していた。
「ありがとうございます、渡辺さんは――お魚を食べるのが上手ですね」
「かあ・・・母親に昔からこういうことはよく教わってきたので」
何か言おうとして、直春は取り繕うように笑顔を浮かべた。直春の言う通り、直春も写真でみた写真から感じられるような女装趣味を全く感じさせず、普通の成人男性らしく穏やかに食事を楽しんでいた。魚を食べるのが上手かったり、ナイフとフォークを使うのにも慣れている様子だ。
「育ちがいいのね、お似合いだわ」
康子はそういって思わず声に出しちゃったって顔で、「あらごめんなさい」と微笑んだ。
「私も同じこといおうとしたの」
裕子もそういって着物で口元を隠しながらおほほと笑った。今の会話でお似合いだなんてどういうことだろう。
「ちょっと、佐々木さんにも好きなタイプというか決める権利があるんだから」
直春は困ったようにそういうと、
「渡辺さんは私でいいんですか?」
千草は、はっきりとそう言った。その言葉には、ナイフを持って直春に突き付けているような気迫があった。
「いいですよ」
直春は、千草が突き付けたナイフを握って微笑んだ。
「こんな素敵な人であったことがありません、正直、一目惚れです」
直春が男らしくそういったのに対し、千草は心の中で睨みつけた。
私のことよく知らないくせに、素敵な人ですって?どんな裏が?どんな意図が。一目惚れなんてあるわけないでしょう?そういうのは恋愛小説とか恋愛ドラマとかだけの話よ。
「千草はどう?」
康子は、せかすように千草にそういった。
「私は・・・もう少し直春さんのことを知らないとわからないわ」
困ったようにそういうと、裕子が、
「そうやよねえ、母親同士で盛り上がっちゃって、私たちは別の席に移動するから2人で楽しんでちょうだい」
助け船ともわからない、おせっかい船を出した。
「それがええわ、ごめんねえ、きいつかえんくて」
「か、母さん」
千草が呼び止めようとすると、康子はにっこり微笑んだ。
「大丈夫、千草頑張るんやで」
小声で千草にエールを送り、おほほと2人は立ち上がると、襖をあけていってしまった。思わずため息をつきたくなった千草だったが、
「佐々木さんは、僕のことを知りたいとおっしゃっていましたが、どんなことが知りたいですか?」
突然質問されて戸惑った。どうして殺し屋に狙われているのかということは今まで話して少しだけ興味があるがそれ以外お前自身には興味ないと真実を伝えるわけにはいかない。
「そうですねえ、趣味はなんですか?」
「読書と、ゴルフです」
即答だった。正直納得の趣味だ。
「佐々木さんはどうですか?」
「私は、カフェめぐりと、料理です」
嘘だ、だが銃の手入れと人殺しの仕方を模索することが趣味ではこの美味しそうな飛騨牛も真っ青になってしまうだろう。
「女性らしい趣味ですね」
「ええ、渡辺さんも男性らしい趣味ですね」
なんだこの生産性のかけらもない無駄な会話は。お見合いというのはこんな感じなのか。千草は、無表情に肉を食べながらそう思った。
「佐々木さんの得意料理はなんですか?」
直春にそういわれて、千草はすぐに、
「から揚げです」
そう答えた。これらの趣味や得意料理はネットで一般男性に好感を持たれるものをチョイスしている。
「そうなんですね、佐々木さんのから揚げ、食べてみたいですね」
本当に思っているのかどうか怪しい誉め言葉を、千草は無表情で聞いていた。
「渡辺さんは、どんなジャンルの本が好きなんですか?」
「僕は推理小説ですね」
「知的なんですね」
「ありがとうございます、佐々木さんはお母様ととても仲がよいみたいですね」
渡辺は、探るような瞳で千草のことを見た。なにこの男。だからなんだっていうの?その質問にどんな裏があるの。千草はそればかり考えていた。
「2人ともよく似ていて素敵な親子だなと思います。僕も父を失ってから、母とずっと2人で・・・」
「そうなんですね、渡辺さんは地元なのにどうしてお母様の家に顔を出さないのですか?」
千草の問いに、渡辺は苦笑いで答えた。
「佐々木さんと一緒ですよ。退職されたと聞いた時は驚きました。本当にお母さん思いなんですね。僕の母、入院中癌と聞かされてショックを受けたと思うんですけど、佐々木さんのお母様が声をかけてくださったみたいで、頑張れたみたいなんです。佐々木さんのお母様は、佐々木さんの話をよくしていたらしくて、凄くいい娘さんだと。実をいうとそういう話を母から聞いて、僕はあなたに惹かれました。お互い大切な家族が大変な・・・時ですが大事な家族を支えていきましょう」
「家族思いなんですね」
「はい」
直春はしっかりと頷いた。それを見て千草は違和感を感じた。
「どう?話は弾んでる?」
康子たちは、よっちらえっちらと襖をあけ帰ってきた。
「千草さんとお話しができてよかったよ」
直春はそういっては直春の母に微笑んだ。
「どうだった?千草」
康子にそう聞かれて、千草は答えた。
「渡辺直春さん、気に入ったわ」
「本当!?よかったわぁ」
裕子は声をあげて喜んだ。そして、それは康子も同様だ。
「お互いね、独身の娘息子がいて、年も近いからもしかしてこれって運命なのかなって思ってたのよ」
康子は嬉しそうにそういった。
「そうそう、じゃ、これからお友達からってことでいいのかしら」
裕子は、話をまとめるようにそういった。
「よろしくお願いします、佐々木さん」
「えぇ、よろしくお願いします。渡辺さん」
今日はとりあえず大円談でまとまったと両方の母は喜んでいた。
