寝室と布団は康子が色違いを買って届けてくれたが、千草は使う気はなかった。普段から夜の仕事が多い千草は、基本的には朝寝て夜行動することが多い。だが、仕事がない日や朝から出る時には、前日の夜早くから寝ておいて朝行動する。基本的に千草にとって家とは必要最低限の生活をする為に帰る場所であり、のんびりテレビを見たりとか、読書をしたりなんてことは基本的にしないのだ。
「そんな心配することは杞憂だといわれそうだけど、女性なんだし、寝室で寝たら?俺がソファで寝るよ」
直春がそういうと、千草は目を細めた。
「杞憂よ。テレビが見たいのなら寝室に運んであげるわ」
「いや、いいけど。ちなみに千草さんって休みの日はどうやって過ごしてるの?」
「寝ているか、仕事のことを考えているか」
千草は、ぼそっと答えた。
「そっか、でももう仕事やめたそうじゃないか。ずっと寝ているの?」
「お母さんと話したり、寝たり・・・仕事のことを考えたり」
「じゃあ、明日俺について高山を回ろう」
直春の提案に千草は眉をひそめた。
「何故私が」
「どうせ暇なんだろう?いいじゃないか。じゃあ、また明日。おやすみ」
「あっ・・・ちょっ」
直春は、自分で勝手に話をつけて電気を消し、寝室に行ってしまった。しばらく暗闇の中座っていた千草だったが、ソファに寝っ転がって目を閉じた。千草は、職業上あまり深い眠りはしないようにしている。悪い夢を見なくていいからいい。
「おやすみなさい」
直春には寝顔を見られたくないので明日は早起きしなくては。千草は、固く目を閉じた。
千草は目覚ましなしで朝起きられるタイプだった。
「ん・・・」
見慣れない天井。広い和室に一人、千草は、ピンクの花柄の布団で寝ていた。気持ちの良い朝だった。
「・・・何!?」
本当に見慣れない天井!?自分は昨日の夜、リビングのソファで寝ていたはず。千草は、がばりと勢いよく飛び上がるように体を起こす。
「え・・・」
時間を確認した千草は驚いた。朝6時。辺りを見回すとここに本来いるはずの直春がいなかった。千草は布団からすぐさまでると、リビングへと向かった。
「・・・なっ」
リビングのソファで直春が寝ていた。ブランケットを勝手に使っている。
「なっ・・・何で」
千草は、寝ている直春に近寄った。全くのんきに寝ているようだ。
「ちょっと」
直春をゆすると、直春は寝返りを打ってソファ側の方を向いてしまった。
「ねえ、起きなさいよ」
「母ちゃん・・・もう少し・・・」
「誰が母ちゃんよ!」
千草が頭をはたくと、直春はうつらうつらとしながらゆっくりと目を開けた。そして、のっそりと寝返りを打ちながら千草に向き直った。
「ちょっと、どうして私があっちで寝ているのよ」
寝室を指さして千草が聞くと、直春は意識がまだちゃんとしていない様子で目を細めた。
「ええ?だって、女性をソファで寝せて自分は布団で寝たなんて母ちゃんが知ったらショックを受けるかなと思って」
「・・・・・」
言葉を失うとはこのことだった。千草は眠りが浅い。何かあったらすぐに起きて相手を攻撃できるように訓練したというのに、その私がこの男に寝室へと運ばれた?千草は顎に手を添えて首を傾げた。
「どうやって私を移動させたのよ」
「何回か起きた千草さんに殺されかけたけど、首を締めあげられたまま寝室に行って寝かせたよ」
「嘘よ。そんなの私覚えてないわ」
「それは何より」
直春は、あくびをしてまたソファに体を横たえ目を閉じた。
「ちょっと、寝るの?」
「うん、昨日は夜が遅かったから。人間ずっと眠りが浅いわけではないんだよ」
それは私のこと?千草はそう言おうとしたが、直春いわく母ちゃんの為に自分を寝室の布団に寝かせたというのならば、怒るのもバカらしい。千草は大人しく顔を洗いに行った。
朝は、パン派かご飯派か。2人は別々のものを食べることで争いは起きなかったが、直春にとって、まさか千草がパンを焼き、味噌汁と目玉焼きを作ってくれると思わず、起きた時目をぱちぱちさせながらテーブルの上の料理を見ていた。
「ありがとう、千草さん」
「私だってこれくらいは作れるのよ」
千草にとって直春にされっぱなしなのは癪だったから故の行動だったのだが、直春は大人しく席につき、
「あぁ、うまい」
小さい声で感想をいいながら味噌汁をすすっていた。千草が手料理を異性に振舞うのは初めてだった。その相手がターゲットの男とは。千草は、もう化粧も終え、シャツにジーパンというラフな格好に着替えていた。
「今日はどこか行くの?」
「はあ?」
直春の問いかけに千草は眉をひそめた。昨日行くといったのはあんたでしょうがというのをぐっとこらえ、深呼吸をして答えた。
「覚えてないの?」
「・・・あぁ、そうだった。へえ、朝のことと同様に覚えていないのかと思ってた」
「何?行かないわよ」
「悪かったって」
直春はくすくす笑って、ごちそうさまでしたと手を合わせるとささっと洗い物をして服を着替えてきた。
「何その恰好」
腕を組んで千草は眉を吊り上げた。
「そんな心配することは杞憂だといわれそうだけど、女性なんだし、寝室で寝たら?俺がソファで寝るよ」
直春がそういうと、千草は目を細めた。
「杞憂よ。テレビが見たいのなら寝室に運んであげるわ」
「いや、いいけど。ちなみに千草さんって休みの日はどうやって過ごしてるの?」
「寝ているか、仕事のことを考えているか」
千草は、ぼそっと答えた。
「そっか、でももう仕事やめたそうじゃないか。ずっと寝ているの?」
「お母さんと話したり、寝たり・・・仕事のことを考えたり」
「じゃあ、明日俺について高山を回ろう」
直春の提案に千草は眉をひそめた。
「何故私が」
「どうせ暇なんだろう?いいじゃないか。じゃあ、また明日。おやすみ」
「あっ・・・ちょっ」
直春は、自分で勝手に話をつけて電気を消し、寝室に行ってしまった。しばらく暗闇の中座っていた千草だったが、ソファに寝っ転がって目を閉じた。千草は、職業上あまり深い眠りはしないようにしている。悪い夢を見なくていいからいい。
「おやすみなさい」
直春には寝顔を見られたくないので明日は早起きしなくては。千草は、固く目を閉じた。
千草は目覚ましなしで朝起きられるタイプだった。
「ん・・・」
見慣れない天井。広い和室に一人、千草は、ピンクの花柄の布団で寝ていた。気持ちの良い朝だった。
「・・・何!?」
本当に見慣れない天井!?自分は昨日の夜、リビングのソファで寝ていたはず。千草は、がばりと勢いよく飛び上がるように体を起こす。
「え・・・」
時間を確認した千草は驚いた。朝6時。辺りを見回すとここに本来いるはずの直春がいなかった。千草は布団からすぐさまでると、リビングへと向かった。
「・・・なっ」
リビングのソファで直春が寝ていた。ブランケットを勝手に使っている。
「なっ・・・何で」
千草は、寝ている直春に近寄った。全くのんきに寝ているようだ。
「ちょっと」
直春をゆすると、直春は寝返りを打ってソファ側の方を向いてしまった。
「ねえ、起きなさいよ」
「母ちゃん・・・もう少し・・・」
「誰が母ちゃんよ!」
千草が頭をはたくと、直春はうつらうつらとしながらゆっくりと目を開けた。そして、のっそりと寝返りを打ちながら千草に向き直った。
「ちょっと、どうして私があっちで寝ているのよ」
寝室を指さして千草が聞くと、直春は意識がまだちゃんとしていない様子で目を細めた。
「ええ?だって、女性をソファで寝せて自分は布団で寝たなんて母ちゃんが知ったらショックを受けるかなと思って」
「・・・・・」
言葉を失うとはこのことだった。千草は眠りが浅い。何かあったらすぐに起きて相手を攻撃できるように訓練したというのに、その私がこの男に寝室へと運ばれた?千草は顎に手を添えて首を傾げた。
「どうやって私を移動させたのよ」
「何回か起きた千草さんに殺されかけたけど、首を締めあげられたまま寝室に行って寝かせたよ」
「嘘よ。そんなの私覚えてないわ」
「それは何より」
直春は、あくびをしてまたソファに体を横たえ目を閉じた。
「ちょっと、寝るの?」
「うん、昨日は夜が遅かったから。人間ずっと眠りが浅いわけではないんだよ」
それは私のこと?千草はそう言おうとしたが、直春いわく母ちゃんの為に自分を寝室の布団に寝かせたというのならば、怒るのもバカらしい。千草は大人しく顔を洗いに行った。
朝は、パン派かご飯派か。2人は別々のものを食べることで争いは起きなかったが、直春にとって、まさか千草がパンを焼き、味噌汁と目玉焼きを作ってくれると思わず、起きた時目をぱちぱちさせながらテーブルの上の料理を見ていた。
「ありがとう、千草さん」
「私だってこれくらいは作れるのよ」
千草にとって直春にされっぱなしなのは癪だったから故の行動だったのだが、直春は大人しく席につき、
「あぁ、うまい」
小さい声で感想をいいながら味噌汁をすすっていた。千草が手料理を異性に振舞うのは初めてだった。その相手がターゲットの男とは。千草は、もう化粧も終え、シャツにジーパンというラフな格好に着替えていた。
「今日はどこか行くの?」
「はあ?」
直春の問いかけに千草は眉をひそめた。昨日行くといったのはあんたでしょうがというのをぐっとこらえ、深呼吸をして答えた。
「覚えてないの?」
「・・・あぁ、そうだった。へえ、朝のことと同様に覚えていないのかと思ってた」
「何?行かないわよ」
「悪かったって」
直春はくすくす笑って、ごちそうさまでしたと手を合わせるとささっと洗い物をして服を着替えてきた。
「何その恰好」
腕を組んで千草は眉を吊り上げた。
