その夜はご飯に味噌汁、焼き魚にサラダというメニューになった。調理するのは何を考えているのかわからない直春という男。千草は、直春の調理中背後でずっと直春を監視していた。
だが、特に変な様子はなく、直春の料理は普通に美味しかったので千草は驚いた。
「お口にあいましたか」
「うちの母さんよりは劣るけどまあまあだわ」
いつもレトルト食品ばかり食べている千草にとって、温かく手作りの食事を康子のご飯以来食べていなかった。故に母と比べてしまうのだった。
「まあ、おふくろの味に勝るものはないからな」
直春は、当たり前というようにそういって味噌汁をすすった。
「お風呂沸かしたから先に入っていいよ」
千草は、いつも一番風呂を康子に譲っている。
「いいわよ、先に入って」
だが、ご飯を作ってもらった直春に風呂まで譲ってもらうのは悪いと思いそう言った。
「いや、俺が入った後いつもぬるいって言われるから。先に入ってくれた方がありがたい」
「そう」
千草は、大人しく風呂に入ることにした。タオルなどはもう準備してあった。至れり尽くせりという感じである。何故直春は就職できないのか、千草は素直に疑問に思った。お風呂場には大きなバケツが2つ程端に寄せてあった。千草は、湯加減を確かめた後、そのバケツに手を伸ばした。
「出たわよ」
「ありがとう」
直春と交代し、千草は髪を乾かしにいった。千草は髪が短い。仕事の時に邪魔なのと、髪を乾かす時間がもったいない、そもそも髪自体無駄なものだという認識だからだ。
「ああああああああああああああああああああ!!」
千草が髪を乾かしていると、お風呂の方から直春の叫び声が聞こえてきた。
「!?・・・何かあったのか!?」
千草は岐阜に来てから少々平和ボケしていたが、久々に仕事モードになり氷のように鋭い瞳を光らせた。
誰かに襲われた?侵入者?私の代わりにあの男を殺しに来た新手がいたというの?何も聞いていないわよ。千草は台所に向かい包丁を手にした。そして、足音を殺しながら全速力でお風呂場に向かった。直春はターゲットであり千草の殺す対象だが、今死なれては康子と裕子が悲しむ。2人が安心できるように結んだお付き合いしているフリまでして同棲しているわけで。直春がここで殺されたなんて話になってしまったらすべてが水の泡になってしまう。
「どうした!?何があった?」
浴室の扉を勢いよく開けると、タオルにくるまって涙目で震えている直春がいた。千草は、急いで浴室を確認した。窓が開いている。
「何?誰かに何かをされたのか?」
千草は、何枚もタオルを体に巻き付け顔を真っ赤にしている直春に声をかけた。
「された」
直春は、短く答えて虚ろな瞳で千草の方を見た。
「誰にやられた?怪我はないか?」
直春は、すっとカタカタ震える指で千草を指さした。
「後ろか!?」
千草は包丁を振りながら、勢いよく背後を振り返る。だが、敵の気配はなかったし、敵もいなかった。
「何よ、いないじゃないか」
「違う、お前だお前。俺をやっぱり殺そうとしたな」
直春は、涙目のまま千草をしっかり指さしていた。口調は穏やかないつもの口調とは打って変わり怒っている。千草は、首を傾げ少し殺し屋モードを解いた。
「していないわよ。その逆。こうしてあなたを助けにきてあげたんじゃない」
包丁をぎらつかせながら千草は無表情で言った。
「助けにきただと、トドメを刺しにきたの間違いだろ!?」
「何があったの」
そういうと、直春は膝を抱える手に力を込めた。
「風呂のお湯がめちゃくちゃ熱かったんだよ・・・」
「え?」
千草は、一瞬聞き間違いかと思い聞き返した。確か風呂のお湯がどうとか言っていた気がする。
「風呂の湯がめちゃくちゃ熱かったんだよ!お前お風呂入ってないだろ!精一杯熱くした後でてきただろ!」
「してないわよ、そんなこと」
千草は、本当に身に覚えがなかった。ただ普通にお風呂に入ってでてきただけだったのだ。
「人間が触れる熱の量超えてたんだよ!見ろこれ!肌が真っ赤じゃないか、3秒も肌に触れていたら皮膚がただれていたぞ!」
本当に直春の肌は真っ赤だった。顔も肌も真っ赤でゆでだこのようだった。千草は、包丁を置いて自分の風呂の時の様子を思い出していた。
「やっぱり心当たりがないわ」
「どうしてなんだよ!じゃあ、俺がお風呂を沸かした後何をした」
「普通にぬるかったからお湯を足したわよ。ほらあそこのバケツにお湯をなみなみに入れておいて、あそこの蛇口から一番熱いお湯で浴槽を満たして・・・」
「おかしいだろ!普通お風呂を沸かしたら湯に水を足して温度を調整するだろ」
「そんなことをしたらぬるくなっちゃうじゃない」
千草は、真剣に答えた。やっぱりそんなに怒られることをした覚えはない。
千草は相当風呂の湯が熱くないと「ぬるい」と感じてしまうタイプだった。
故に康子の風呂の後お湯を入れぬるいと感じながらお風呂に入っていた。康子はぬるいお湯が好きなんだと思っていたし、千草もそれなら自分も合わせようと思っていた。
今日のお風呂も当然ぬるかったが、湯をバケツにわけお湯を入れたらいつもよりかは幾分かマシになった。
「ったく・・・おっかないなあ」
直春は、本気で言っている様子の千草を見て多少呆れながら赤い顔をそむけた。
「もう、俺はお風呂いいから着替えるから」
「あら、いいの?」
「いいよ、風呂がトラウマになる」
「じゃあ明日からは、あなたが最初に入ればいいわ」
「そうさせてもらうよ」
直春は遠慮なく即答した。
「えらい目にあった」
直春は、そういって台所で水を飲んでいた。千草はブランケットを持ってきて膝にかけ、腕を組んでソファに座っていた。
「まだ夜の9時だけどこれから何するの?」
「特にすることもないし、寝るだけよ」
千草は直春を見ずに答えた。
「そこで寝るの?」
「ええ」
だが、特に変な様子はなく、直春の料理は普通に美味しかったので千草は驚いた。
「お口にあいましたか」
「うちの母さんよりは劣るけどまあまあだわ」
いつもレトルト食品ばかり食べている千草にとって、温かく手作りの食事を康子のご飯以来食べていなかった。故に母と比べてしまうのだった。
「まあ、おふくろの味に勝るものはないからな」
直春は、当たり前というようにそういって味噌汁をすすった。
「お風呂沸かしたから先に入っていいよ」
千草は、いつも一番風呂を康子に譲っている。
「いいわよ、先に入って」
だが、ご飯を作ってもらった直春に風呂まで譲ってもらうのは悪いと思いそう言った。
「いや、俺が入った後いつもぬるいって言われるから。先に入ってくれた方がありがたい」
「そう」
千草は、大人しく風呂に入ることにした。タオルなどはもう準備してあった。至れり尽くせりという感じである。何故直春は就職できないのか、千草は素直に疑問に思った。お風呂場には大きなバケツが2つ程端に寄せてあった。千草は、湯加減を確かめた後、そのバケツに手を伸ばした。
「出たわよ」
「ありがとう」
直春と交代し、千草は髪を乾かしにいった。千草は髪が短い。仕事の時に邪魔なのと、髪を乾かす時間がもったいない、そもそも髪自体無駄なものだという認識だからだ。
「ああああああああああああああああああああ!!」
千草が髪を乾かしていると、お風呂の方から直春の叫び声が聞こえてきた。
「!?・・・何かあったのか!?」
千草は岐阜に来てから少々平和ボケしていたが、久々に仕事モードになり氷のように鋭い瞳を光らせた。
誰かに襲われた?侵入者?私の代わりにあの男を殺しに来た新手がいたというの?何も聞いていないわよ。千草は台所に向かい包丁を手にした。そして、足音を殺しながら全速力でお風呂場に向かった。直春はターゲットであり千草の殺す対象だが、今死なれては康子と裕子が悲しむ。2人が安心できるように結んだお付き合いしているフリまでして同棲しているわけで。直春がここで殺されたなんて話になってしまったらすべてが水の泡になってしまう。
「どうした!?何があった?」
浴室の扉を勢いよく開けると、タオルにくるまって涙目で震えている直春がいた。千草は、急いで浴室を確認した。窓が開いている。
「何?誰かに何かをされたのか?」
千草は、何枚もタオルを体に巻き付け顔を真っ赤にしている直春に声をかけた。
「された」
直春は、短く答えて虚ろな瞳で千草の方を見た。
「誰にやられた?怪我はないか?」
直春は、すっとカタカタ震える指で千草を指さした。
「後ろか!?」
千草は包丁を振りながら、勢いよく背後を振り返る。だが、敵の気配はなかったし、敵もいなかった。
「何よ、いないじゃないか」
「違う、お前だお前。俺をやっぱり殺そうとしたな」
直春は、涙目のまま千草をしっかり指さしていた。口調は穏やかないつもの口調とは打って変わり怒っている。千草は、首を傾げ少し殺し屋モードを解いた。
「していないわよ。その逆。こうしてあなたを助けにきてあげたんじゃない」
包丁をぎらつかせながら千草は無表情で言った。
「助けにきただと、トドメを刺しにきたの間違いだろ!?」
「何があったの」
そういうと、直春は膝を抱える手に力を込めた。
「風呂のお湯がめちゃくちゃ熱かったんだよ・・・」
「え?」
千草は、一瞬聞き間違いかと思い聞き返した。確か風呂のお湯がどうとか言っていた気がする。
「風呂の湯がめちゃくちゃ熱かったんだよ!お前お風呂入ってないだろ!精一杯熱くした後でてきただろ!」
「してないわよ、そんなこと」
千草は、本当に身に覚えがなかった。ただ普通にお風呂に入ってでてきただけだったのだ。
「人間が触れる熱の量超えてたんだよ!見ろこれ!肌が真っ赤じゃないか、3秒も肌に触れていたら皮膚がただれていたぞ!」
本当に直春の肌は真っ赤だった。顔も肌も真っ赤でゆでだこのようだった。千草は、包丁を置いて自分の風呂の時の様子を思い出していた。
「やっぱり心当たりがないわ」
「どうしてなんだよ!じゃあ、俺がお風呂を沸かした後何をした」
「普通にぬるかったからお湯を足したわよ。ほらあそこのバケツにお湯をなみなみに入れておいて、あそこの蛇口から一番熱いお湯で浴槽を満たして・・・」
「おかしいだろ!普通お風呂を沸かしたら湯に水を足して温度を調整するだろ」
「そんなことをしたらぬるくなっちゃうじゃない」
千草は、真剣に答えた。やっぱりそんなに怒られることをした覚えはない。
千草は相当風呂の湯が熱くないと「ぬるい」と感じてしまうタイプだった。
故に康子の風呂の後お湯を入れぬるいと感じながらお風呂に入っていた。康子はぬるいお湯が好きなんだと思っていたし、千草もそれなら自分も合わせようと思っていた。
今日のお風呂も当然ぬるかったが、湯をバケツにわけお湯を入れたらいつもよりかは幾分かマシになった。
「ったく・・・おっかないなあ」
直春は、本気で言っている様子の千草を見て多少呆れながら赤い顔をそむけた。
「もう、俺はお風呂いいから着替えるから」
「あら、いいの?」
「いいよ、風呂がトラウマになる」
「じゃあ明日からは、あなたが最初に入ればいいわ」
「そうさせてもらうよ」
直春は遠慮なく即答した。
「えらい目にあった」
直春は、そういって台所で水を飲んでいた。千草はブランケットを持ってきて膝にかけ、腕を組んでソファに座っていた。
「まだ夜の9時だけどこれから何するの?」
「特にすることもないし、寝るだけよ」
千草は直春を見ずに答えた。
「そこで寝るの?」
「ええ」
