「れいくん、これ…本当にしなきゃダメ…?」


制服に着替え終わってから、鏡に映っている自分の格好を凝視する。そして、れいくんに何度目かの確認をした。



「絶対」



れいくんはそれだけを言って頷いた。


た、たったの一言…。


そう何度も確認するのは、鏡に映っている自分はお世辞でも可愛いとは言えない格好をしているからだ。



まぁ、いつもだけど…。


黒くてボサボサの腰まであるウィッグをかぶったものの、顔が見えないくらいに長い前髪。
それと、みるからにすごく分厚く作られているけど度が入っていない伊達メガネ。


こ、これじゃあ同じクラスの人たちと目を見てお話ができないよ。
それ以前に一緒に話してくれる子もできないかもしれない、あはは…。



「雪は可愛すぎるからこれくらいはしないと。でもまだ可愛さが隠しきれてない気がするんだけど…」


困ったように顎に手を当て腕を組み、考え込んでいる様子のれいくん。

た、ただでさえ長い髪が邪魔で顔が見えないのに可愛いとかあるはずないよ…。



「普通の状態も全然可愛くないし、この格好でもう大丈夫だよ?」



これ以上地味になるのは避けたい。



「はぁ、自覚してないからこんなに心配なのに…。分かった。でもメガネだけは絶対に外しちゃダメだよ?雪の可愛さは俺だけ知ってればいいから」


か…!可愛くなんてないのに…!
れいくんの意地悪…。

でも、なんの自覚だろう。

よく分からないけど、れいくんは一度決めたらなかなか食い下がってくれない。

…れいくんがここまで言うなら仕方がない。



「わ、分かった」



このメガネ、れいくんから貰ったものだもんね。せっかく買ってくれたんだから無駄になんてできないもの。



「いい子だね、雪は」



そう優しく言ったれいくんはまた頭を撫でてくれた。

あ、でも…。

「ウィッグだからあんまり触っちゃダメだよっ!」



せっかくセットしたのに今やり直しちゃったら遅刻しちゃう。

結構しっかりと被っているつもりだけど、れいくんは頭を撫でる癖があるから一応はずれないように気をつけないと。



「そうだった…」


そういってれいくんはゆっくりと手を下ろした。



「仕方ないか、そのかわり帰ったらたくさん撫でさせて」


「へ…?!う、うん…」

今日も、れいくんは朝から甘い。

ウィッグとメガネを着けててよかったかもしれない。

きっとすっごく顔が赤くなっちゃってる。