私には幼なじみがいる。


勉強も運動も…なんでもできて、とびきり優しい幼なじみが。


ちょっぴり過保護なところもあるけど、とってもかっこよくてまるで王子様みたいな人。



「雪、起きて」



大好きな声が聞こえて重たい瞼を開く。


少しぼやけた視界がだんだんくっきりしていき、私の大好きな優しい笑顔が映った。



「んん、…れぃ、く…」



私を起こしにきてくれたこの男の子は、れいくんこと、一ノ瀬嶺。私の幼なじみ。



「ほら雪、そんなに寝てたら今日一緒に行くって約束したケーキ屋さん先に俺一人で行っちゃうよ?」

「えっ?!それはだめ…!」


私はれいくんの思いがけない言葉に咄嗟に勢いよく体を起こした。



「食べてみたいケーキがあるから二人で一緒に買いに行こうねって…」


「ふふっ冗談だってば。ごめんね。目、覚めたでしょ?」



いたずらっ子のような顔から嘘みたいに優しい笑みへと変え、そうれいくんが言う。


だ、騙された。
でも、そんなに優しい顔されちゃったら怒れないよ…。


「寝ている雪も可愛いから起こすのはやまやまだったんだけど、学校の準備もしなきゃでしょ?」



「うっ、うん」



ね、寝顔なんて、絶対可愛いはずないのに、れいくんはそういうことすぐさらっと言う。


そしてれいくんはまた微笑みながら私の頭の上にそっと手をおいた。


朝の恒例になっているれいくんからのなでなではすごく心地いい。


うぅ…また眠たくなってきちゃいそう…。



「リビングで待ってるから着替えたら教えてね」

「分かったっ。い、急ぐねっ」

「ふふっ。雪は急いだらドジしゃうでしょ?いつも通りに着替えてくれれば良いから」

「うぅ…」


ドジなのは恥ずかしいから認めたくないけど…。
正論すぎて他に言葉が出てこないよ。