心を少しでも開いてくれて、友達だと言ってもらえて、うれしい気持ちはあるけれど、完全に脈がないとも言われているようで心が素直に喜べなかった。

 そして、俺は、鈍器で頭を殴られたかのような、衝撃的な現場を見てしまった。

 それは、仕事中新しいことでも教えているのであろう津本さんとさっちゃんの姿。さも当たり前のようなその光景なはずなのに、その光景を見た時、俺は嫌でも察してしまった。

 俺がそうだからわかる。

 俺がさっちゃんに向けてる視線と同じ視線を、さっちゃんは津本さんに向けていた。

 心臓が痛い。

 知りたくなかった。

 気付きたくなかった。



 さっちゃんは津本さんのことがたぶん、きっと、好きなんだ。



 そういえばそうだ。

 最近さっちゃんと店のことについて話すと必ずと言っていいほど津本さんの話題が上がる。そしていつもさっちゃんは津本さんのことを褒める。津本さんはさっちゃんの教育係で関わることも必然的に多いからって思ってたけど、そこに好意があるって考えたら腑に落ちてしまった。

 気付いてしまった。

 俺は、その日、初めてさっちゃんを避けた。

 出会ってから一ヶ月半。毎日連絡を取っていたのに、たった一日。たった一日だけどさっちゃんに俺は連絡をしなかった。

 できなかった。

 日付が変わって、ほんの少し期待をした。俺から連絡しない日があればさっちゃんの方から連絡をくれるのではと。

 でも、さっちゃんから連絡は来なかった。

 途切れたラインにさっちゃんは何かを思ってくれているのだろうか。それとも一日くらいと何も感じていないのだろうか。

 そうだとしたら、虚しいな。

 こんなどうしようもないくらい育ってしまった好きをどうしたらいいかなんて分かるはずもなかった。