いつも俺からだった。

 この一ヶ月間、ラインも散歩に誘うのもいつも俺からだった。

 その日も俺から通話をかけた。さっちゃんはちゃんと通話に出てくれたけれど、どこか様子が違って、そして初めてさっちゃんから散歩しようと誘われた。

 誘ってくれた嬉しさなんかよりも、心配が勝った。

 さっちゃんは一週間の休みをもらっていて、その初日の夜だった。

 それとなくなんで休むのか聞いてもはぐらかされてちゃんと答えてくれなかったことを考えると、きっとさっちゃんにとって触れて欲しくないことが理由なんだろうと思った。

 さっちゃんは苦しんでいた。

 出会った瞬間からそんなのわかっていたけれど、いざ、苦しんでいる様子を目の当たりにして、その大きさに気付かされた。

 結局何が辛いのかは教えてもらえなかったけれど、そばにいさせてはくれた。

 俺がもっと頼り甲斐があって、そう例えば年上だったら、さっちゃんはもう少し俺を頼ってくれたのだろうか。

 思わず喉元まで出かけてやめた、”好き”という言葉。

 今、俺が俺の気持ちを押し付けるのは間違っている。

 だから俺は笑った。

 笑って、”友達”という関係を繕った。

 その日から今まで以上に距離が縮まったのを感じた。

 少ないけれど、さっちゃんからラインが来るようになったし、散歩も誘ってくれるようになった。

 毎日連絡を取り合って、二日に一回は散歩をした。

 一週間してさっちゃんが仕事に復帰してからもそれは当たり前のように続いた。変わったことといえば、職場では休憩がかぶれば話す程度だったのが、復帰してからは仕事中でも暇な時間帯とかには雑談してくれるようになったことだ。

 水野さんや津本さんには本当に仲良いよねと何度も言われた。最初はさっちゃんもはぐらかしていたけれど、今では笑って友達なんでと言ってくれるようになった。

 複雑だった。