「早く入ろ!」

 少し強引に私をスタッフルームの中に連れ入れてくれる。スタッフルームの中にいたのはやはり二人でどちらとも男性だった。

 二十代半ばか後半ぐらいの人と、三十代ぐらいの人。

 二人の視線は私に向けられる。

 緊張と動揺で言葉が出ず、再び私は固まってしまう。人との会話の仕方なんて正直忘れてしまった。

「じゃじゃじゃーん!紹介します!今日から俺のお友達になった松田紗月さんです!」

 さっき声をかけてくれた同い年くらいの子が沈黙を破り私の紹介をする。あれ、ちょっと待って。今、名前。

「ん?あー名前知ってたから驚いた?シフト表に書いてあるから覚えたんだよ。」

 また彼は人懐っこい笑顔を向ける。どう返すのが正しいのだろうか。反応に困り、固まっていると、座っていた二十代半ばくらいの男性が立ち上がる。

「松田さん、そいつチャラいから気をつけて。で、俺は津本。松田さんの一応教育担当です。」

 一礼されて反射的に一礼し返す。

「津本さん俺チャラくないっすよ!!さっちゃんに変なこと吹き込まないでください!」

 津本さんの発言に怒った人懐っこい雰囲気の彼は抗議をする。そしてさらっと、あだ名呼び。津本さんの発言のせいもあり、完全にチャラい認定を心の中でする。

「自己紹介いい?俺は水野です。よろしく。」

 三十代ぐらいの男性も席を立ち、私に自己紹介をする。私は再び一礼をする。

 そして全員の視線は人懐っこい彼に向く。すると彼は、一瞬驚いた表情を浮かべた後、ハッと気付いたように反応し背筋をピンと伸ばす。

「俺の名前は春名智希です!性別は男、年齢は20歳、今年21になります!先々週入ったばっかの新人です!!新人同士、仲良くしようねさっちゃん!」

 あ、年齢近いとは思ってたけど、私より一個下なんだ。というか、自己紹介もやっぱりチャラい。チャラい人は少しというかだいぶ苦手な部類に入る。

 私と正反対の人。

 春名さんはそんな印象だった。先々週入ったばかりというのに、他の二人ともすごく打ち解けている感じがするし、私に対しての接し方もコミュニケーション慣れしているというか、多分俗に言う陽キャってやつなんだろうな。

 それに対して私は、自己紹介に一礼で返すのがやっとなコミュニケーション能力皆無の陰キャ。

 学校とかだったら絶対交わることのない組み合わせ。