「サリーシャ様はアハマスへ向かう行きの馬車の中で、どちらかというと落ち込んでいらっしゃいましたでしょう? でも、今の笑顔は輝いています」
「……わたくし、そんなに浮かれて見える?」
「とても楽しそうに見えますわ」

 ノーラがあまりにも楽しそうに笑うので、サリーシャは少し恥ずかしくなって、ふて腐れたように口を尖らせた。

 セシリオは午前中に散々仕事の場所に付き合わせるような無骨な男だし、一緒に買い物しながらよいお出掛け先を調べておくようなスマートさもなかった。それなのに、サリーシャは今日の彼とのお出かけがとても楽しかったのだ。