サリーシャはおずおずとセシリオを見上げた。散歩から帰ってきた後、早速普段使い用の水色のドレスに着替えてみたのだ。シンプルなスカートの裾を少しだけ持ち上げると、セシリオは口元に手を当てて上から下まで視線を動かしてから、朗らかに笑った。

「とても似合っている。やはりきみは何を着ても可愛らしいな」
「まぁっ! ありがとうございます」

 サリーシャは思いがけないストレートな褒め言葉に思わず頬を赤らめた。
 よく、舞踏会の会場で歯の浮くような甘言──例えば、「きみの美しさには夜空に煌めく星も嫉妬する」だとか、「バラのように可憐なきみに近づく栄誉を」などと言ってくる(やから)はいた。しかし、こんなにも直球な誉め言葉を贈ってくる人はかえっていなかった。

 機嫌がよさそうなセシリオが椅子に座り、サリーシャも椅子に腰を下ろした。主の片手を少し前後させる合図に合わせ、給仕人が食事を運んできた。

 今朝、サリーシャはどうか自分に気を遣わずに普段通りの食事にして欲しいとお願いした。毎回毎回多くの余りものを出すのは心苦しいし、幼いころを田舎の農家で過ごしたサリーシャは食べ物の大切さを痛いほど知っている。