「いや、これくらいはお安いごようだ」

 一部始終をサリーシャが見ていたことには全く気付いていないようで、心なしか得意気だ。その様子を見て、サリーシャはやっぱりセシリオのことをかわいらしい人だと思った。見た目は厳つい大男。歳も十歳も上なのに、なぜだろう。
 食事中もチラチラとこちらを見ては考えるように動きを止め、再び食事を口に運び始める。きっと、話しかける機会をうかがっているのだろう。

「閣下。今日は一日お仕事ですか?」
「……あ、ああ。そうだ」
「あの、今日の晩餐は閣下をお待ちしていても?」

 サリーシャが少し首をかしげて問いかけると。セシリオは少し目をみはり、口元に手を当てる。そして、嬉しそうにはにかんだ。

「もちろん。遅くならないようにここに戻る。いや、仕事が遅くなったとしても、夕食の時間は抜けてくる」
「まあ! お仕事優先で構いませんわ」

 サリーシャはくすくすと笑った。