サリーシャは小さく食前の挨拶をすると、近くにいた給仕人に言って皿に料理を盛り付けてもらった。どれも美味しそうなので沢山盛りすぎたかもしれないと思いふとテーブルの向こうを見ると、セシリオの皿にもこれでもかと言うくらい盛られている。それこそ、山盛りだ。最後にのせたハムは半分皿からはみ出ている。

「まあ! 閣下は沢山お召し上がりになるのですね」

 驚くサリーシャに対し、セシリオは自分の皿とサリーシャの顔を見比べて、キョトンとした顔をした。

「この皿、小さいだろ?」

 サリーシャは自分の前に置かれたお皿を見た。ごく普通の、一般的なサイズの取り皿に見える。
 サリーシャはそれを見て確信した。セシリオは『いつもは一皿だけ』と言っていたが、その一皿はとてつもなく大きな一皿に違いない。けれど、本人はその事に気付いていないのだ。

「ええ。確かに閣下には小さいように見えます」
「そうなんだ。なぜ今朝に限って、こんなに小さいのだろう?」

 セシリオはどうにも解せないといった様子で、眉根を寄せて皿を見つめた。サリーシャは吹き出しそうになるのを必死にこらえながら、なんとか真面目な顔で答えた。

「それはきっと、わたくしに合わせて下さったからですわ。お気遣いありがとうございます」

 それを聞いたセシリオはサリーシャの方を見てから、手元の皿に視線を落とした。そして、チラリと給仕人の方を伺い見て、給仕人が小さく頷くのを確認してから口元を綻ばせた。