「いや。いつもはパンとおかずが盛られた一皿とスープだけだ。きみの好みが分からなかったので、料理人が沢山用意した」
サリーシャは驚いた。この沢山のご馳走の数々は、サリーシャの好みが分からないという理由だけで用意された? では、昨日の夜もきっと凄いご馳走だったに違いない。サリーシャはサーッと青ざめた。セシリオはその様子を見てサリーシャが考えていることを察したようだ。
「昨日の晩餐は、夜間勤務の衛兵達に振る舞ったから大丈夫だ。みな、普段口にすることのないご馳走に大喜びしていた。──あれは本当に凄かったな。たぶん、五分くらいでなくなった。いや、三分かもしれん」
セシリオはその光景を思い出したのか、遠い目をした。
辺境の地であるアハマスを守る衛兵は、皆、屈強な男達だ。当然、食べる量もとても多い。きちんと夜食として賄い飯も用意しているのだが、それでも屋敷の料理人が用意したご馳走は別腹だったようだ。まさに飢えたハイエナのごとく、一瞬で皿から何もなくなった。
「これも、残ったら彼らが処理するから大丈夫だ。しかし、せっかく作ったものをきみが食べてくれないと料理人ががっかりしてしまう。頂こう」
「はい。頂きます」



