■ 第四話 謁見   


 サリーシャがエレナに連行されて裁縫所であーでもない、こーでもないと生地選びをしていたころ、セシリオはフィリップ殿下に呼び出されて殿下のプライベートエリアを訪れていた。
 王宮の裏側に位置する王族専用プライベートエリアは、たとえ高位貴族であっても許可なしに立ち入ることは許されない。許されるのは、王族の身の回りの世話をする侍女や使用人、特に重用されている側近、それに、直々に立ち入ることを許可された一部の貴族のみだ。

 王宮は上から見ると、横が長く、縦が短いT字のような形をしている。中央に謁見室などがある中央棟があり、両翼廊で繋がる左右に各種の執務エリアが、そして、中央棟の裏側には渡り廊下で繋がった少し出っ張った建物があり、それが王族専用のプライベートエリアだ。

 案内する侍女の後を歩きながら、セシリオはふと回廊から見える景色に視線を移した。

 プライベートエリアと中央棟は屋根のついた回廊で繋がっている。白亜の柱が両側に建ち並び、その間から見えるのは王宮の庭園だ。
 花の咲き時や全体の調和を完全に計算された美しい庭園。緑の植栽が幾何学模様に並んだ先には、バラ園があるのが見えた。遊歩道側から見ると雑草など一切ない、手入れの行き届いた完璧な庭園だ。しかし、これだけ広いと、裏側を見ると手が行き届いていない場所もいくつか出てくる。