タウンハウスで旅支度から正装に着替えて、二人は馬車を乗り換えて今度は王宮へと向かった。
城下の町から真っ直ぐに伸びる街道と王宮の敷地の間には、荘厳な門が構えてある。金属製にも関わらず精緻に彫刻が施されたそれは、ただの門にも関わらずいかほどの価値があるのか、想像もつかない。
ギギギっと重い門が開くと、その先に見えるのは石畳で平らに整備された長い街道。そして、少し視線を上げた先に見える王宮は、外見を見ただけで華やかな内装だと想像がつく、重厚な建物だ。
サリーシャは少しだけ馬車から身を乗り出すと、その景色をよく見ようと目を凝らした。
白に近いクリーム色の外壁は、タイタリア国内各地の良質な石材を使用し、至る所に石彫刻が施されている。中央部分は一際屋根が高くなっており、一番上層階にはタイタリア国王がいる謁見室がある。下層部には舞踏会や重要行事を行う大広間があり、あの日サリーシャが刺された場所でもある。
左右対称に広がる両翼廊の先にはこれまた重厚な建物が見え、この王宮の豪華絢爛さを強調していた。一つは国の政治・経済を担う文官たちが働く建物、もう一つは各種の研究所や軍関係の施設が入っているという。
そして、ここからは見えないが、中央の高い建物の裏側に王室の関係者が暮らしている。
「サリーシャ。あんまり顔を出すな」
「あっ、はい」



