「これはこれは。ようこそ、奥様」

 タウンハウスで出迎えた家令の男性──ジョルジュは、サリーシャを出迎えるとそれはそれは嬉しそうな笑顔を見せて歓迎した。ドリスの甥と聞いていただけあり、どことなく雰囲気が似ている。サリーシャはまだ結婚していないので正確には『奥様』ではないのだが、ジョルジュの嬉しそうな笑顔を見ると否定するのも悪い気がして、そのままにしておいた。

「旦那様にこんなにお美しい奥様が! このジョルジュは喜びのあまり、言葉も出ません」
「まあ、ありがとう」
「いやいや、本当にお美しい。旦那様、いつの間にこのようにお美しい奥様を見初められたのです? ちっとも領地を出ていないのに。ああっ! まさか! ここに寄らずに秘密で王都に!?」
「そんなことはしていないぞ」

 ハッとしたように動きを止めて傷ついた顔をしたジョルジュに、セシリオがすかさず否定する。『言葉も出ない』と言ったわりにはとてもよく喋る、明るい家令だった。セシリオの否定の言葉を聞き、こめかみに指をあてて首を傾げた後に、ポンと手を打った。

「わかりました! どこかで一目惚れして文通で愛を深めたのですね? いやいや、旦那様も隅におけない」