このウェディングドレスはセシリオとの結婚式に向けて、サリーシャのためにオーダーメイドで製作されたものだ。デザインや生地選びの段階から、サリーシャの希望を事細かに聞いて仕立屋が一から仕立てた、世界に一着しかないドレスでもある。
 そして、このドレスは非常にシンプルなデザインだった。装飾といえる装飾は、首もとのレース以外には何も付いていない。スカートの膨らみも少なく、控えめに言うと華やかさがない。はっきり言ってしまうと、地味なのだ。

 ことの発端は、ドレスをオーダーしたときに、まだサリーシャがセシリオと一生を添い遂げられることに確信を持てていなかったことだった。
 一時の仮初め花嫁が一度しか着ないウェディングドレスに大金をかけるわけにはいかない。そう思ったサリーシャは、セシリオが恥をかかない程度にきちんとした、しかしながら極力装飾を排除した安価なドレスをオーダーした。
 何度も本当にこれでいいのかと口酸っぱく確認した仕立屋は、大丈夫だと言い張るサリーシャのその希望をしっかりと実現させた。そして、仮縫いまで仕上がったドレスが今着ているこれである。

「今から装飾を増やすことは可能かしら?」