辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

 
 ブラウナー侯爵は先ほど拘束ベルトをされて連れていかれるところを見た。しかし、マリアンネの処遇がどうなるのか。今は部屋で近衛騎士監視の元で軟禁されているようだが、サリーシャはそのことが引っかかり、おずおずと話を切り出した。

「マリアンネ嬢は、直接は何も罪は犯していない。ただ、父親は間違いなく死刑だろう。爵位も没収となる故、今後は平民として生きていくしかないだろうな」
「平民……」

 サリーシャは小さく独り言ちた。
 平民として生きている女性など、世の中にごまんといる。サリーシャだって、もとは平民だ。しかし、マリアンネは生粋の貴族令嬢だ。あの性格で、平民の暮らしに対応できるとは思えなかった。

「気にするな。何とでもなるものだ。まあ、その優しさはサリーシャの美徳ではあるのだがな」
 
 黙り込むサリーシャを見つめ、フィリップ殿下は少し困ったように眉尻を下げた。
 いつの間にか窓の外は夕焼けに染まってきていた。茜色に染まる空は、あの日にセシリオと見た夕焼けを彷彿とさせる。白とピンク色に染まった雲が、その茜色の空を美しく彩っていた。