辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

  
「あれは男の俺から見ても、いい男だ。責任感が強く、実直で男気がある。少々、貴族らしさに欠けるところがあって、無骨だがな」
「知っております。セシリオ様はあれでいいのです。あれ以上素敵になられては、沢山の魅力的な女性が閣下に夢中になって、わたくしは心配で気が休まるときがなくなってしまいますわ」
「……これは随分と惚気られてしまったな」

 フィリップ殿下は愉快でたまらないと言った様子で肩を揺らした。サリーシャはその様子を見て、にんまりと口の端を持ち上げる。

「あら? だって、あの時に申し上げたではないですか。殿下に負けないくらい素敵な男性を射止めて、幸せに暮らすと」
「ははっ、そうだったな。さすがはサリーシャだ。その宣言通りだな」

 そう言うと、フィリップ殿下はサリーシャを見つめて目を細める。そして、二人は声を上げて笑った。フィリップ殿下とこんなふうに歓談をして笑い合うのは本当に久しぶりだ。お互いに近況を報告し合い、また笑う。まるで、あの悪夢の婚約披露パーティーの前に戻ったかのように感じた。