辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する


「とても有難いお話だと思います。フィルが……わたくしのことを思って真剣に考えてくれたこともわかるわ。でも、わたくしはセシリオ様をお慕いしているのです」
「本当に? サリーシャに惚れている男には、アハマス卿よりもっと見目麗しくスマートな男もいるぞ? きっと、そなたを大事にしてくれる。それに、このような辺境の地でなく、王都の近くに居を構えることができる」
「そうかもしれません。でも、悩むまでもありませんわ」

 サリーシャはまっすぐにフィリップ殿下を見つめて、首を振るとそう言いきった。
 サリーシャが望むのは、セシリオの隣であり、ほかのどこでもない。王都の近くに住めるとか、見目麗しいとか、そんなことは関係がなかった。

 しばらく無言でサリーシャを見つめていたフィリップ殿下は、その本気具合を見極めたのかふっと表情を緩めた。

「そうか。なら、よいのだ。先ほどのアハマス卿とサリーシャの様子を見て、答えは分かっていた。だが、一応確認しようと思っただけだ」

 王族である殿下の申し出を断るのは、ある意味不敬にあたる。しかし、フィリップ殿下はサリーシャを見つめ、怒りもせず口の端を持ち上げた。