辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する


「……わたくしに、縁談?」
「ああ。あの事件のあと、サリーシャに想いを寄せる近衛騎士のうち、俺が特に信頼できると思った何人かと面談した。そして、そなたの傷を承知の上で大切にしてくれるであろう男を数人、縁談相手として紹介するつもりだった。近衛騎士は良家の子息ばかりで身元もはっきりしているし、教養もある。そなたが気に入った男がいれば、婚姻の暁には祝いに爵位と屋敷も与えるつもりだった」

 それは、破格の褒賞だ。王室自らが縁を取り持つ婚姻。しかも、祝いに爵位と屋敷もつけるなど、そうそうあるものではない。サリーシャが知る限り、そこまで恵まれた褒賞は聞いたことがなかった。王太子であるフィリップ殿下と、その婚約者であるエレナを守ったことに対し、王室として最大限の褒美を用意したのだろう。
 
 驚きのあまり絶句するサリーシャを、フィリップ殿下は少し気の抜けたような顔で見つめ、眉尻を下げた。

「ところが、あの日想定外のアハマス卿が来て、そなたと婚約したいと言い出した」
「……」
「サリーシャ、今一度問う。そなたは、アハマス卿と婚約して、幸せになれるか? 俺ならば、この婚約を穏便になかったことにして、別の男の元に嫁がせてやることも可能だ。アハマス卿も、実家のマオーニ伯爵も、誰も文句は言えぬ」