「アハマス卿がここにブラウナー侯爵を長期で足止めしてくれて助かった。おかげで、王都と領地のブラウナー侯爵邸をくまなく捜査して、証拠も押さえることが出来た。武器の取引の日時が書かれた領収書や偽装に使った経歴の調査書など、色々と出てきた。礼を言う」
「身に余るお言葉です」

 セシリオは大きな体を揺らし、頭を垂れる。
 サリーシャはそこでようやくフィリップ殿下がわざわざブラウナー侯爵本人に偽物の親書を託してアハマスまで使者として寄越した理由を理解した。ブラウナー侯爵に感づかれずに屋敷を捜査するために、疑われない方法で遠方に行かせる必要があったのだ。

 その後も色々と調査結果を話し、一通りの話を終えたフィリップ殿下はふうっと息を吐いた。

「あいつは俺が王都に引き連れて行く。ご苦労だった」
「よろしくお願いします」
「ところでアハマス卿」

 フィリップ殿下が頭を下げるセシリオに声を掛けた。

「サリーシャと二人で話をしたい。いいか?」
「殿下とサリーシャがお二人で、ですか?」