「余興はやめだ。その者を、捕らえよ」
次の瞬間、白い騎士服を着た近衛騎士達が一斉にブラウナー侯爵を取り囲み、あたりは大混乱になった。しかしエリート騎士達より一足先に、一瞬でブラウナー侯爵を捻り上げて床に押し付けたのはセシリオだった。
「何をする! 無礼者が!!」
地面に押し付けられたブラウナー侯爵が真っ赤な顔で怒鳴り散らす。サリーシャは一体何が起こったのか分からず、呆然とその様子を見守った。
「無礼者はお前だ。どれだけ俺の領地で好き勝手するつもりだ?」
地を這うような怒声が響き渡り、空気がビリビリと震える。ブラウナー侯爵は地面に這いつくばりながら、目だけぎょろりと動かし、サリーシャを睨み付けた。
「お前さえ……お前さえいなければ、全て上手くいってたのに……」
「黙れ!」
ブラウナー侯爵の言葉にセシリオが激昂して、あたりに地を震わせるような怒声が響いた。ついでブラウナー侯爵が悲鳴を上げたが、サリーシャには何が起こったか、もはやわからなかった。
拘束用ベルトで締め上げられたブラウナー侯爵が近衛騎士達に引き渡されて連行されてゆく。サリーシャはその一部始終を、ただただ小さく震えながら眺めていることしかできなかった。



