ブラウナー侯爵が部屋に控える従者の一人に声をかけると、従者は恭しく布がかけられた長細いものをブラウナー侯爵に差し出した。ブラウナー侯爵がそれを受け取り布を取ると、布の下からは長細い筒状の棒のようなものが二組現れた。棒の片側は三角形のような形をしており、引き金のための金具や、火薬を入れるための火蓋などがついている。パッと見は木製に見えたが、よく見るとまわりを木で覆われているだけで、主要部分は金属でできている。
ブラウナー侯爵の説明によると、フリントロック式とは、フリントと呼ばれる火打石が当たり金に当たり、そのときに発生した火花が火薬に引火して発砲する手法のことだという。
実物を見ながら、ブラウナー侯爵はサリーシャに一通りの操作の仕方を教えた。
「とても優れた武器だということがわかりました。ありがとうございます」
「これしきのことは構いませんよ」
説明を聞き終えたサリーシャがブラウナー侯爵にお礼を伝えると、ブラウナー侯爵はにこやかに微笑んだ。
──わたくし、もしかしてひどい勘違いをしていたのかしら?
サリーシャはブラウナー侯爵のその様子を見て、急激に自分が恥ずかしくなった。ブラウナー侯爵はマリアンネとセシリオを結婚させるためにわざと自分に意地悪を言っていると思っていたのだ。実は、本当にアハマスのことを心配していたのかもしれない。



