「しかし、近年の主流はさきほど申し上げたとおり、銃です。特に、これまで使ってきた火縄銃に変わって最近出てきたのが、フリントロック式と呼ばれる点火方式を用いたマスケット銃です」
「セシリオ様が先日、ブラウナー侯爵から五千丁購入していたものね?」
「その通り。実戦で勝利するのは、いかに銃を上手く使いこなすかが肝なのです。このフリントロック式マスケット銃は以前の銃と比べて飛躍的に信頼性が上がった。それに、値段も多少安価です」
「そうなのね」
サリーシャはブラウナー侯爵の説明を聞きながら、神妙に頷いた。昨日、本人を目の前にして『辺境伯夫人としての適性がない』と失礼なことを言い切っただけのことはあり、ブラウナー侯爵が説明することはサリーシャの知らないことばかりだ。
「よろしければ、実物があるのでお見せしましょう」
「実物があるのですか?」
サリーシャは驚いて聞き返した。フリントロック式マスケット銃は最近流通し始めたばかりなので、本にも挿絵が載っていない。いったいどんなものなのか、見てみたい気もした。
「アハマス卿にご紹介する見本用に持参していたのです。おい、持ってきてくれ」



