辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

    ◇ ◇ ◇

 領主館の一階の応接室の一つ。サリーシャはブラウナー侯爵と向き合っていた。後ろにはノーラが控えており、二人の間にあるテーブルにはいくつかの本が並べられている。

 それらの本には、様々な種類の防具や武器が挿し絵付きで載っていた。その一つ一つをブラウナー侯爵が指差して丁寧に説明していくのを、サリーシャは興味深く聞き入った。
 ブラウナー侯爵がサリーシャに紹介したこれらの本は全てアハマスの領主館の図書室にあったもののようだが、サリーシャは全くその存在に気づいていなかった。興味がなかったともいうべきか。
 
 ぺらりっと紙をめくる音が部屋に響く。
 サリーシャは本の挿絵に載っている鎧の変遷を見ながら、ふと疑問を覚えた。以前は全身をすっぽりと覆っていた鎧が、最近のものになると逆に面積が小さくなっているのだ。

「なぜ鎧は全身を覆わないのですか? 腕が危なくないかしら?」
「銃が発達してきたからですよ。矢や剣であれば防げた鎧も、銃だと貫通してしまう。ですから、胸を守るために胴囲の鋼を厚くする必要があるのです。しかし、厚くすると重量が増してしまう。サリーシャ嬢はこの全身が覆われるタイプのプレートアーマーで、どれくらいの重量があるか想像がつきますかな?」
「全くわからないわ」
「例えばこれだと、大体三十キログラム程度あります」