「お手紙を落としてますわ」
「手紙?」
「はい。枕元のあたり、ベッドの下に落ちてましたわ」
ノーラは白い封筒を差し出す。手紙を受け取った記憶はないのだが、宛先には確かにサリーシャの名前が書かれていた。差出人はセシリオだ。
「え? セシリオ様から?」
急いで書いたのか、文字は崩れて乱れている。
サリーシャははやる気持ちを抑えながら、サイドボードからペーパーナイフを取り出し、それの封を切った。
中を見たサリーシャはハッとして封蝋を確認した。目を凝らしたが、それはバラのような鮮やかな赤にみえる。
『出来るだけ早く戻る』
中の便箋には、乱れた文字でただ一言、そう走り書きされていた。



