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 今朝はおかしな夢を見た。
 ベッドサイドに立ったセシリオが寝ているサリーシャに優しくキスをして、指で髪をすく。そして、耳元で『すぐに戻る。愛してるよ』と囁いて去ってゆく夢だ。内容自体はさほどおかしくないのだが、妙にリアリティーがあった。

 ──わたくし、きっとセシリオ様が不足しているのだわ。

 朝起きたサリーシャは、ほんのり赤くなった頬を冷ますように手で扇いだ。たった一晩セシリオに会えなかっただけなのに、あのような自らの願望を具現化した、リアリティーたっぷりの夢を見るなんて。
 触れ合った唇の柔らかな感触がまだ残っている気がして、無意識に自分の唇を指で触れる。こんなことで、これから先やっていけるのだろうかと急激に気恥ずかしさがこみ上げてきた。

 そんな中、朝食のときにモーリスが懐から取り出した封書に、サリーシャは目が釘付けになった。その封書は今朝、セシリオとともにピース・ポイントへ向かった騎士の一人が伝達役としてアハマス領主館に持ち帰ってきたものだという。
 サリーシャの部屋はアハマス領主館の入り口側に面しているが、今朝騎士が戻ってきたことには全く気がつかなかった。

「内容は?」