辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する


 そう言われて、サリーシャはもう一度その三通、とくに封蝋部分を注意深く見比べた。欠け方でないならば、印の形だろうか。しかし、印はどれも同じに見えた。なおのことじっと見つめていたサリーシャは、ふとあることに気付いた。

「これとこれ、少し色が違いますわ」

 サリーシャは、三通のうち二通を選んで、朝日にかざすように斜めに持った。ほんの僅かな違いだが、一方の封蝋が暗い色をしているように見えたのだ。

「そうだ。よくわかったな」
 
 セシリオはサリーシャの頭をくしゃりと撫でる。

「王室からアハマスに送られる親書の封蝋の色には意味がある。混じり気のない赤は通常のもの、黄色味を帯びていれば重要だったり緊急のもの、そして黒味を帯びていれば、何らかの理由で作成されたダミーだ。この三通なら、これが黒、これが赤、これが黄……」

 セシリオはそう説明しながら、封筒を指差す。どれも、本当に注意深く見なければ赤にしか見えないような僅かな違いだった。