「これは……、王室からの親書でございますか?」
「そうだ」

 セシリオは短く答えると背後から腕を伸ばし、その三通をサリーシャの前に並べた。

「何か違いが分かる?」
「違い?」

 サリーシャはその三通を見比べた。白い紙は一目で上質と分かる混じり気のないものだ。全て同じ長方形をしており、封の部分に施された封蝋は赤い。そこには、サリーシャのよく知るタイタリア王国の王室の印が押されている。

「同じに見えますわ」
「よく見て」

 耳元でセシリオが囁くたびに、くすぐったいような、こそばゆいような、不思議な感覚がする。セシリオはサリーシャの手に自分の手を重ねると、その封筒を持たせた。伝わってくる熱にどぎまぎしながらも、サリーシャはもう一度その封筒をじっと見つめる。

「大きさは……一緒ですわね。紙の手触りも一緒だわ。封蝋の欠け方ですか?」
「封蝋に着目したのは正解だが、欠け方じゃない。こうやって明るい場所で並べて見ると、なにかに気付かないか?」