セシリオは柔らかく微笑むと、ベッドからすくっと立ち上がってドアの方へ向かい、部屋を出ていった。サリーシャはその様子をただ呆然と見送った。

「え? ええっ!?」

 一体どういう状況なのかと頭を整理して、脳裏に甦るのは昨晩のこと。一部始終が思い出すにつれ、だんだんと頬は紅潮し、顔からは火が出そうだ。サリーシャは昨晩、自分からセシリオに触れて欲しいと誘ったのである。
 がばっと布団を上げて自分の姿を見ると、初めて見る白のガウンを着ている。生まれたままの姿でないことには少し安心したが、このガウンを自分で着たのかはよく覚えていない。しかし、それはおそらく思い出さない方がいい気がして、サリーシャは考えるのをやめた。

 熱くなった両頬を押さえながら、サリーシャは改めて部屋を見渡した。広さはサリーシャの普段使っている客間と同じくらいだろうか。落ち着いたベージュのカーテンには白い花や幾何学的模様の刺繍がふんだんに施されている。ベッドは客間で使用しているものの倍くらいのサイズがあり、精巧な彫刻が施された天蓋からは白いレースカーテンが下がっていた。壁際には本棚とサイドボードが置いてあるが、使っていないのか殆ど空に近い状態に見えた。そして、その隣にはクローゼットが置かれていた。