そう言うと、セシリオは微笑んでサリーシャの頬を優しく撫でた。止まっていたはずの涙がまたぽろりと溢れ落ちる。

「いいか。きみに醜い傷などない。人を殺めた俺の方が、よほど醜い」
「そんなこと、ありません!」

 サリーシャはぶんぶんと首を横に振った。そして、まっすぐにこちらを見つめるヘーゼル色の瞳を見返した。

「閣下の傷痕は、決して醜くなんてありません」
「なら、きみだって同じはずだ」

 零れ落ちる涙はもう止められそうにない。

「わたくしは……わたくしは閣下のお側にいてもよいのでしょうか?」
「まだそんな愚問を発するのか? きみのことは俺が幸せにすると言ったはずだ」

 セシリオの眉間に皺が寄る。片手を取られて引き寄せられると、大きな軍服ごと抱き締められた。それだけで、言い様のない幸福感がサリーシャを包み込む。
 サリーシャはおずおずと大きな背に手を回した。直接触れあう肌からは温かな熱が伝わってきた。ほんのり温かく、そして、とても安心する。