「きみは、俺の体を見て醜い傷だらけだと思うか?」

 セシリオが静かにサリーシャに問う。

「え……?」

 両手を広げたセシリオの体は、よく見ると腕、胸、腹の至るところに傷痕があった。銃創のような痕や何かが刺さったような小さな傷もあれば、大きな傷痕も複数残っている。恐らく、実際の戦争で負った傷だということは、見てすぐに分かった。サリーシャはふるふると首を振る。

「思うはずがありません」
「なぜ?」
「だって……閣下の傷痕は、タイタリアのために戦った証です。醜いだなんて、思うはずがないわ」

 そう言ったサリーシャをセシリオは静かに見返した。

「きみだって、同じだろう?」

 サリーシャは息を飲んだ。

「きみの傷痕は、タイタリアの未来の国王夫婦を敵から守った、勇敢さの証だ。何も醜くない。きみは、とても美しい」