「これは……思ったより酷いな……。だいぶ深かったはずだ。痛みは?」
「普段はないのですが、動いたときに時々ひきつれるような痛みが」
「そうか……」

 そう言ったセシリオは、背中から手を外す。ガザリと音がして、サリーシャの肩にずっしりとした重みがかかった。見ると、セシリオの着ていた軍服の上着が肩からかけられていた。つい今までセシリオが着ていたそれは、まだ仄かに体温を残して暖かい。そして、その軍服の上から、セシリオはサリーシャを包み込むように抱き締めた。

「きみに醜い傷などない。今確認したが、やはりなかった」

 サリーシャは驚きで目を見開いた。傷はある。今確認したはずなのに、何を言っているのかと理解出来なかった。

「何を……。今、ご覧になったのでしょう?」
「ああ、見たさ。こんな大ケガを負って、きみが生きていてくれてよかった」
「……では、なぜ?」

 震える声に答えることなく、背中からセシリオの体温が消え、再びばさりと衣ずれの音がした。サリーシャが振り返ると、セシリオは自らの上衣を脱ぎ捨てたところだった。鍛え上げられた肉体が暗い明かりに照らされる。突然の行動に、サリーシャは驚きのあまりになにも言えなかった。