「わたくしの背中には、醜い傷があります。ブラウナー侯爵の言うとおり、傷物なのです。閣下の妻には相応しくありません」
「ほかには?」
「……ほか?」
今度はサリーシャが怪訝な表情でセシリオを見返した。しばらく無言で見つめ合ったのち、セシリオは小さく首を振ると、毒気を抜かれたような表情で、またサリーシャを見つめ返した。
「もしかして、それで屋敷を飛び出したのか?」
「……はい。挙式の後にすぐに離縁したのでは閣下の醜聞になってしまいますので、本当は中庭の改造が終わったら打ち明けるつもりでした。けれど、先ほどの会話を聞いて、もうここには居られないと思いました」
「俺との結婚が嫌だったのではないのか?」
「断じてそのようなことはありません。わたくしは、閣下をお慕いしています。信じて頂けないかもしれませんが、それは本当なのです」
セシリオはぐっと眉を寄せてから片手で額を押さえると、大きくため息をついた。そして、眉間のあたりを指で押さえて項垂れた。
「俺は今、激しく怒っている」
「……はい」
「きみに対してではない。自分に対してだ」
「はい?」
「ほかには?」
「……ほか?」
今度はサリーシャが怪訝な表情でセシリオを見返した。しばらく無言で見つめ合ったのち、セシリオは小さく首を振ると、毒気を抜かれたような表情で、またサリーシャを見つめ返した。
「もしかして、それで屋敷を飛び出したのか?」
「……はい。挙式の後にすぐに離縁したのでは閣下の醜聞になってしまいますので、本当は中庭の改造が終わったら打ち明けるつもりでした。けれど、先ほどの会話を聞いて、もうここには居られないと思いました」
「俺との結婚が嫌だったのではないのか?」
「断じてそのようなことはありません。わたくしは、閣下をお慕いしています。信じて頂けないかもしれませんが、それは本当なのです」
セシリオはぐっと眉を寄せてから片手で額を押さえると、大きくため息をついた。そして、眉間のあたりを指で押さえて項垂れた。
「俺は今、激しく怒っている」
「……はい」
「きみに対してではない。自分に対してだ」
「はい?」



