サリーシャは思わず耳を塞いで目を閉じ、小さな悲鳴を上げた。
 乱暴に開けられたドアは勢いよく開いたせいで、百八十度回って馬車の躯体に激しくぶつかり、ガシンと大きな音を立てた。サリーシャの座る椅子まで振動が伝わってきたほどだ。
 もしかするとドアは壊れてしまったかもしれない。少なくとも大きく傷ついたはずだ。

 恐る恐る目を開けたサリーシャは、その開いたドアの方を向いて息をのんだ。

「……閣下」

 そこには鬼のように恐ろしい形相をしたままサリーシャを見下ろす、セシリオがいた。