「あの、約束していたハンカチが出来たのでお渡ししようと思いまして。最近いつもマリアンネ様がいらっしゃるので渡しそびれてしまって」

 サリーシャはポケットに入れたハンカチを取り出し、セシリオに手渡した。セシリオはしばらく無言でそれを眺めると、指で刺繍部分をなぞった。

「これは……デオか?」
「はい。いかがでしょう?」

 サリーシャはおずおずとセシリオを見つめた。気に入ってくれると嬉しいとは思ったが、やはり緊張する。セシリオはハンカチから顔を上げると、ヘーゼル色の瞳を細めて微笑んだ。

「とても上手だ。ありがとう」

 その表情を見て、サリーシャはホッと胸を撫で下ろした。

「気に入っていただけてよかったわ。もう一枚も一週間程度でお渡しできると思います」
「そうか。楽しみにしておく」

 そう言ってセシリオはハンカチを自身の膝の上に置いて、サリーシャを見つめた。