サリーシャは部屋の中を見渡した。
 広さはサリーシャが滞在する客間の倍程度の広さで、大きな執務机と本棚、サイドボードが置かれている。執務机の上には何かの書類が無造作に置かれていた。屋敷の正面から見て左側の建物にもセシリオは執務室を持っているので、これは持ち帰った仕事やプライベートのものなのだろう。
 奥に目を向けると、一人用の小さなベットと接客用のソファーとテーブルが見えた。飾られた装飾品は、やはり剣や盾だ。壁には長さや太さの違う三本の剣が横向きに並べられている。そして、壁には今入ってきたのとは違うドアがもう一つ、付いていた。

「今、侍女が出払ってるから水くらいしかないんだ。──酒は飲まないだろ?」
「はい、飲みません」

 ソファーに座ったサリーシャが頷くと、セシリオはサイドボードからグラスを取り出し、手ずから水差しから水を注いだ。透明の液体が透き通ったグラスの中に並々と揺れている。

「酔わせてみたい気もするが、また今度だな」

 セシリオは口の端を持ち上げてニヤリと笑うと、水の入ったグラスをサリーシャの前に置いた。

「それで、どうかしたか?」

 自分用のブランデーを片手に持ったセシリオが隣に腰を下ろす。