「申し訳ありません。こんな夜更けに非常識でした」

 サリーシャは慌ててぺこりと頭を下げてそこから辞そうとしたが、それは叶わなかった。セシリオに腕を取られたのだ。

「待て。きみなら、大歓迎だ」
「わたくしなら?」

 腕を取られて振り返ったサリーシャは、訝し気にセシリオを見上げた。セシリオは少しバツが悪そうな顔をしてサリーシャを見返した。

「悪い、マリアンネかと思ったんだ」
「マリアンネ様?」

 その様子から、サリーシャはマリアンネが少なくとも一回は夜にセシリオの部屋を訪ねてきたのだと悟り、胸にもやもやしたものが広がるのを感じた。この様子だと恐らくセシリオは部屋には入れていないと思うが、不愉快であることに変わりはない。

「入ってくれ」

 セシリオはサリーシャの背に手を添えてると、自室へと促した。