「閣下。邪魔になってしまいますわ」
「では、邪魔にならないようにもっとくっ付いてくれ」

 セシリオは手を離す気はないようで、ぶっきらぼうに言い放った。力が強すぎて、握られた手が少し痛い。けれど、しっかりと握られたその手が「きみのことは忘れていない」と言われている気がして、サリーシャは弱くその手を握り返した。

 小物屋さんで、マリアンネは大量の小物をセシリオにおねだりしていた。遠くから久しぶりに来たのだからお土産を、と言われると、セシリオも断りにくいようだ。ましてや相手は仕事で強いパイプのある侯爵令嬢、ないがしろに出来ないのも理解できる。サリーシャはその様子をまたぼんやりと眺めていた。

「サリーシャ。きみは何か欲しいものはないのか?」

 セシリオに尋ねられて、サリーシャは小さく首を振った。

「いえ、大丈夫です。必要なものは揃っていますわ」
「本当に? きみは慎ましすぎて困る。きみにも何か買いたいんだ」
「でも、揃ってますから」

 サリーシャの言葉に、セシリオは本当に困ったように肩を竦めて見せた。