──ねえ、わたくしはこれからどうすればいいのかしら? 

 またもやそんなことが脳裏を過る。ぼんやりと眺めるサリーシャの視界の端に、キラリと光るものが映った。

 その男が飛び出してきて主役の二人に近づいたとき、サリーシャは反射的に体を前方に滑り込ませた。
 肩から背中の中央部に感じたのは鋭い痛みと燃えるような熱さ。笑顔だった人々の顔が恐怖に染まる。
 更なる激痛が背中を襲い、ヌメッとしたものが滴り落ちるのを感じた。

「誰か、賊だ! 捕らえろ!!」
「衛兵! 衛兵!」

 あたりに怒声が響き渡る。すぐに近衛騎士と衛兵達がなだれ込み、鬼のような形相の男が囚われるのをぼんやりと見つめた。

 ──痛い。寒い。