サリーシャは引き攣りながらもなんとか笑みを返す。一体目の前のこの女性が何を考えているのかがわからず、空恐ろしいと思った。

「ところで、久しぶりにここに来たのですから、城下を見てまわりたいわ。セシリオ様、明日にでも案内してくださいませ」

 マリアンネは斜め前に座るセシリオに話しかける。サリーシャはそれを聞いてセシリオに視線を向けた。確か、明日は用事があるようなことを言っていた。

「明日? 明日はちょっと、都合が悪いな……。誰か別の者に案内させよう」
「別の者? せっかくなのですから、セシリオ様に案内して頂きたいわ。明日が駄目なら、明後日は?」
「明後日ももう予定が入っている」
「まあ! せっかくはるばる遠くから来ましたのに、案内もして下さらないなんて。昔は馬に相乗りでよく色んな所を見せて下さったじゃないですか」
「……それは、ずっと昔の話だ」

 セシリオが低い声で小さく呟く。
 サリーシャは、よくわからないがこの場の空気が悪い方向に向かっていることは感じ取った。それに、マリアンネがセシリオが案内すると言うまでひく気がないことも感じとり、なんとかしなければと思った。