「マリアンネ。こちらは俺の婚約者のサリーシャだ」

 セシリオがサリーシャの肩を抱き、マリアンネに紹介した。

「よろしくお願いします、マリアンネ様。王都ではお姿を拝見していたのですが、ご挨拶が遅れて申し訳ありません」

 サリーシャはスカートの端を摘まみ、ペコリと挨拶をした。

「ごきげんよう。……婚約者……ね」

 マリアンネは小さく呟くと、値踏みをするように上から下までジロジロとサリーシャに視線を這わせた。サリーシャは幾分かの居心地の悪さを感じて、困惑した。この視線は、王都でフィリップ殿下の隣に居たときによく感じたものだ。

「立っているのもなんだし、座ってくれ」

 セシリオの掛け声で居心地の悪い時間が終わる。