その時、呆れたような声が後ろからして、サリーシャは飛び上がるほど驚いた。振り返ると、軍服を着たモーリスが気まずそうな顔をして立っていた。

「ここは俺の屋敷だ」
「そりゃ、そうなんだが。さすがに目のやり場に困る。もうすぐマリアンネ嬢が来るぞ」
「むしろ、見せつけるべきだな」
「なるほど。そういう作戦か」

 やれやれといった様子でモーリスが肩を竦める。
 平然とした様子のセシリオに対し、サリーシャは顔から火が出そうだった。慌ててセシリオから離れようとしたが、腰に回った手の力が強すぎて離れられない。サリーシャはしばらく無言でその腕と格闘したが、最終的には逃れることは無理だと悟り、セシリオに抱き寄せられたまましずしずと晩餐室へと向かったのだった。