サリーシャはコクンと頷く。その話は先ほど晩餐会を(おこな)うと聞いた時に、聞いている。

「こんなに美しいきみの姿をあいつに見せるのは腹立たしいな」
「はい?」

 聞き間違えかと思わず聞き返したが、セシリオはそれに答えることはなかった。忌々し気な様子で舌打ちすると、気を取り直したようにサリーシャに片手を差し出した。
 サリーシャはセシリオの顔とその手を交互に見比べ、おずおずとそこに自らの手を重ねる。手と手が触れ合った瞬間、しっかりと握られたそれがグイッと引かれ、少しよろけたサリーシャはセシリオに抱きとめられるような格好になった。大きな体に包まれるように、力強く腰を支えられた。

「とても綺麗だ。俺が独り占めしたいくらいに」
「っ! ありがとうございます」

 耳元に口が寄せられ、直接吹き込むように囁かれる。サリーシャは全身がカアッと熱くなるのを感じた。サリーシャは元は社交界で『瑠璃色のバラ』とうたわれた身だ。男性からの甘い言葉など散々聞きなれているはずなのに、セシリオから直接的な誉め言葉を囁かれると、どうにも上手くかわせない。
 セシリオは真っ赤になったサリーシャを見つめると、愛おし気に抱き寄せてこめかみにキスをした。

「おい、セシリオ。イチャイチャするのは結構だが、後ろが詰まってる。そういうことは私室でやってくれ」