セシリオは体格がいいので足の長さもサリーシャとは比べ物にならない。あっという間に間合いを詰め、サリーシャの前に立つとぐるりと周りを見渡した。

「あまり、今と変えないようにしようかと思うのです」
「そうなのか? 本当にきみの好きにしてくれて構わないのだが?」
「このお屋敷の方にとってここは何かと感慨深い場所のようなので、出来るだけ今の形を踏襲しようと思います。閣下に何かご希望はございますか?」
「俺の希望?」

 サリーシャには好きにしろという癖に、自分が聞かれることは想定していなかったのか、セシリオは黙り込むと顎に手を当てて考えるような仕草をした。二人の間に沈黙が流れ、優しい風が木々を揺らす。

「そうだな。きみとゆっくりできる場所があるといいな」
「わたくしとゆっくり? 大きめのガセボということでしょうか?」
「大きめのガゼボでもいいし、外から見えにくい芝生でもいい」

 ニヤッと笑ったセシリオの表情を見て、サリーシャは目をパチクリとした。すぐに、ピンと来た。それは、あの王宮にあったような秘密の場所だろう。