「これでよし!」

私が笑うと、「ありがとうございます、小桜先輩」と言いながら唯くんが抱き着いてくる。彼は男子にしては小柄なので、よろけずに済んだ。

「ちゃんとあとで消毒してね。じゃあ、学校行こうか」

遅くなったけど、おはようと挨拶をすると、彼は天使のような笑顔で「おはようございます」と返す。朝はいつもこうだ。毎日のように、唯くんが挨拶してくれる。

「先輩と同い年だったらよかったのになぁ……」

唯くんが寂しそうに私の服を掴んできた。私と少ししか身長が変わらない彼は、私をジッと見つめる。

「だって、先輩と同い年だったら、同じ教室で勉強して、探さなくてもずっと一緒にいられるから」

何だか弟みたいで可愛い。私の手は自然と唯くんの頭に触れる。

「そんなの関係ないでしょ?先輩と後輩っていう関係でも、唯くんとはいつもこうやって話せるんだから」

そう言って笑えば、唯くんも可愛い笑顔を向けてくれる。そして私の腕に自分の腕を絡ませて、「今日部活ない日ですし、放課後クレープでも食べに行きませんか?」と言う。もちろん答えは賛成!

下駄箱で別れた後、彼は微笑みながら胸にそっと手を当てていた。