「そうですね。ワンピースが可愛いのは分かりますが、下着が意外と……」

 そこまで言いかけて(こと)は口を噤んだ、いくら結婚したとはいえ男性に下着の話が出来る様な性格ではなかった。
 加瀬(かせ)から渡されたのは白地に少なめのレースのシンプルな下着。まさか彼の好みがこんな可愛らしいものだとは思わなかったし、わざわざ言って下着姿を想像されても困る。

「あんたに似合うと思って買ったんだけど、気に入らなかったか?」

「いいえ、大丈夫です。でも次からは自分で選んで買いますので……」

 女性の下着の話なのに戸惑う様子も見せず話す加瀬は、こういう事に慣れているのだろうか? 何となく嫌な気分になるのを感じ、琴はこの話題をさっさと終わらせることにする。

「それよりも、服以外には何を買ってきたんですか? スーパーなら私も行きたかったな」

「心配しなくても食材は今日の分しか買ってない、明日には好きなだけ店を見て回ると良い」

 そう言われて琴の表情はパッと明るくなる、きっとそのつもりで加瀬も今日の分しか買ってこなかったのだろう。分かりにくいがやはり琴には優しい男のようだ。