「それって私たちが最初に空港で会った時から、ですか……?」

 確かあの時の加瀬(かせ)はひどく不機嫌そうで、(こと)は彼を怒らせないようにとビクビクしていた覚えしかないのだが。まさかそんな所を気に入られてしまったのかと、琴は不安になる。
 苛めがいがありそうだとか思われているかもしれない、加瀬(かせ)の性癖が気になりつつもさすがに口には出せずにいると……

「考えていることが顔に出すぎだろ。苛めて欲しいのなら、しっかりとご希望に応えてやるが?」

「け、結構です! 私は痛いのも熱いのも、全部嫌いですから!」

 そう琴が叫んだ瞬間、加瀬は思いきり吹き出し身体を丸めて笑い出した。普段クールな彼からは想像もつかないその笑い方に、琴は何がそんなにおかしいのかと考えてみる。
 すると、まだ笑いが収まらない状態の加瀬が答えを教えてくれた。

「あんた、いったい何を想像してるんだ? 痛いのも熱いのもそういうプレイしか考えられないだろう、琴は意外とスケベなんだな」

「なっ! そ、そんなつもりでは……っ!」