ハッキリと言い切られると、これ以上反抗することも出来なくなる。琴は絶対無理だと思いながらも、どこかで加瀬なら現実にしそうだとも思ってしまう。
琴だって普通の女の子で、可愛い物も綺麗なものも大好きだ。綺麗な花嫁になれると言われれば期待だってしないわけがない。
「本当に加瀬さんは自信満々ですね、目が悪いのなら眼鏡かコンタクトをお勧めしますけど……」
「心配いらないな、両目とも2.0で眼鏡もコンタクトも必要になった事はない」
目が悪いのでなければ美的感覚が狂っているのでは? と言いかけたが、なんとか琴は言葉を飲み込んだ。そんなことを言えば何倍にもなって帰ってくる気がしたから。
「もうすぐパリに着く、そろそろ目を覚まして準備してろ」
「え、もう? いつの間にそんな時間が……」
琴は飛行機に乗ってあまり時間がたたないうちに眠りについたはず、それなのにそんなに早くパリに着くものなのかと驚いた。
「色々あって疲れてたんだろ? ぐっすり眠ってたし、俺も起こさなかったからな」
その色々の中に現在進行形で加瀬との問題があるのだが、それは気にするきはないらしい。そんな加瀬を見て琴は小さくため息をついた。